スクラムが上手くいってないなら上手くいってる

スクラムでやっているんですが、問題が多くて、スクラム合わないのかなと思って……」

「問題あるならスクラムが上手くいってますね」

という会話をした。

スクラムをやっていて、いろいろ問題が起きる。スプリントゴールがわからないとか、チームの協力が難しいとか、プロダクトオーナーの権限がないとか。スクラムちゃんとできないなあ、うちには合わないのかなあ、と思う人は多いようだ。

だが、こうした問題が起きているならば、スクラムは正しく機能している。スクラムはチームや組織の問題を検出し、明らかにする仕組みだ。みんなが問題を意識できているなら、上手くいっているわけだ。「うちは〇〇だから、スクラム難しい」と思ったなら、その〇〇を解消できれば仕事がもっと上手くいき、よりよい成果が作れる。

スクラムが上手くいくと、問題が次々に現れる。問題を次々に解消していくと、仕事しやすくなり、コミュニケーションがスムーズになり、チームの能力が向上し、よりよいプロダクトになっていく。チームが成長し、組織が成長し、プロダクトが成長する。これがスクラムが、本当の意味で上手くいっている状態と言える。

ところが、問題を解決する方法をスクラムは教えてくれない。問題を発見すること、モニターすること、解消や改善のために時間を取るべきであることなどはスクラムの一部だが、具体的な解決方法は、それぞれのチームが自分で考えなくてはならない。

「うちは〇〇だ。仕方がない」と思ってしまえば、問題は残り続け、仕事は大変になり、モチベーションは下がり、改善は止まり、スクラムがひっそりと終息する。スクラムをやっていて何も問題がないというのは、実は「(解消できる) 問題はない (けれど解消できない問題が山積み)」という状況であることも、少なくなさそうな気がする。

人間は上手くいっているほうが大体モチベーションが出るし、いい仕事もできる。だから「上手くいってないスクラムがいい」と言われても困るかもしれない。実際には、スクラムは問題や障害を乗り越えるモチベーションを出す仕組みが組み込まれている。改善が目に見えて、仕事が楽になり、困難を解決し、自分たちが成長し、プロダクトがよりよくなる。本当に上手くいくプロセスは、自分たちのものだ。よい仕事をできるようになろう、そのためにスクラムを使おう。